鍼灸師の潜在的な使命②|東洋医学ではないと治らない悩み

鍼灸師

鍼灸道具

志鍼塾 塾長の石丸です。本日は2つ目の「鍼灸師の潜在的な使命」についてお話させていただきます。

鍼灸師が対応できる領域や扱うべき病気の種類について詳しくご説明しますので、ぜひご覧ください。

その1はこちら「慢性病は東洋医学で治すべき」

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鍼灸師が扱える疾患とは

鍼灸師の学生の皆さんや先生、そして鍼灸師の皆さんは鍼灸師が扱える疾患についてどのようにお考えでしょうか。

近年では美容鍼灸や不妊症を専門とした鍼灸院も増えています。社会的認知度も上がり、理解も得られやすくなったことから、この辺りの領域はここ数年で非常にやりやすくなりました。

また、ただ認知度が上がっただけではなく、しっかりとした結果も出ているため社会にも貢献できているでしょう。しかし、命に関わる病気や長期的な病気に関しては、鍼灸師の任務をどのように考えておられるでしょうか。

ほとんどの方はきっと「鍼灸師は整形外科領域がメイン」だと思われているでしょう。鍼灸院を開業した方や現在鍼灸院で働いている方も、患者様の症状の中で対応できるのは整形外科領域のみだと感じておられるかもしれませんね。

主訴とその他の症状

例えば、朝起きると動悸とめまい、腰痛の症状があるけれど、しばらくすると症状が治まった方がいらっしゃいます。

この場合、患者様は朝の症状の中でも「腰が痛いから腰の治療をして欲しい」と言って鍼灸院に来られます。つまり患者様自身も「どうせ動悸とめまいは治せないだろう」と思って来院されるのです。

正直朝起きた時のこれらの症状は病院でも治すことができません。それどころか腰痛だけに焦点を当てて治療すると、患者様は動悸とめまいがそのまま放置される状態となるので、症状が進行してしまうリスクがあります。

鍼灸師が担う領域の思い込み

病院に行くと、症状に合わせて科が分かれています。もちろん、私自身もすべての症状を100%完治させることは難しいと思っていますが、皆さんは「鍼灸師が担う領域は整形外科が9割」という認識になっているのではないかと思います。

婦人科の生理痛や脳神経外科の頭痛などは対応できたとしても「少しだけ」という方が多いのではないでしょうか。

私はこういった認識とは全く逆で、内科が9割、整形外科領域が1割だと思っています。それには明確な理由があり、経絡にはすべて五臓六腑の名前が入っており、肩や腰の痛みも内臓が引き起こしているのです。

西洋医学的に見た内臓の痛みは症状が激しく激痛を感じることもありますが、肩の痛みや腰痛はそういった痛みとは種類が違います。

東洋医学から見た内臓関連の痛みは、五臓六腑の名前がついている「経絡」と五臓六腑がつながっていることによって引き起こされると考えます。例えば、肩の痛みは「胆経」になっていることを示し、肩にある「肩井」に鍼灸をすることで症状が良くなります。

私たちの体にある肝、胆と関係しているため、それらにアプローチをすることで改善が期待できるのです。これを「僧帽筋の炎症が原因」などと言っていると、良くなりません。

自分たちが担うのは整形外科領域だと勝手に思い込んで、その他の科を扱えない、もしくはよくわからないと錯覚している鍼灸師や鍼灸院はとても多いです。

病院の治療領域と東洋医学の関わり方

ここからは病院の各科の治療領域と東洋医学の関わり方について見ていきましょう。

耳鼻科

耳鼻科では、耳管開放症や鼻炎、花粉症なども基本的に治せません。

舌下療法などで治る方もいるかもしれませんが、耳、鼻、喉に関する慢性病は基本的に治らないと考えられます。だからこそ、この領域は東洋医学でやらなければいけません。

循環器科

循環器科では生命にかかわるような不整脈や心筋梗塞など、西洋医学でなければならない病気を多く取り扱います。また、弁膜症や心房中隔欠損症、心室中隔欠損症などの器質的な疾患は西洋医学的な治療が中心で、東洋医学は補足的な治療になります。

しかし、これらの命にかかわるものと器質的なもの以外の、機能的な部分はやはり東洋医学が適しています。動悸や胸の痛みで病院に行っても、原因がわからず対症療法しかしてくれないことも多々あるため、東洋医学の根本原因を探るという行動が必要になります。

小児科

小児科では、小児喘息や慢性扁桃炎、小児の脱毛症、中耳炎、皮膚症状、チック、夜泣きなどの診察をおこないますが、実は病院では治すのが難しいです。

東洋医学で全ての病気が完治するわけではありませんが、東洋医学の方が根本的な原因に向けて適切なアプローチができます。

皮膚科

皮膚科で扱われる代表的な症状はアトピーや慢性蕁麻疹ですが、これらも病院では治すことが難しいです。

実際に、私の鍼灸院に来られている慢性蕁麻疹の方は、12年ぐらい薬を服用しているそうですが治っていません。12年間治療して治らなければ、もはやずっと治らないも同然です。アトピーに関してもステロイドを塗り続けたところで完治はしないため、皮膚の症状は鍼灸師が担うべきです。

内科

胃もたれや慢性胃炎、逆流性食道炎といった慢性的な症状は、病院では治りません。

婦人科

婦人科で寄せられる悩みとして生理痛、生理不順がありますが、これらは薬である程度コントロールはできるかもしれませんが、完全には治りません。続けて服薬しなければまた症状が出てしまいます。

つまり、あくまで対症療法であり、「症状の出ない身体」を作ったとは言えないのです。

生理痛などがあると、その延長で内膜症や子宮筋腫、不妊症などにつながっていきます。なので、生理痛自体を改善できると他の病気になる確率をぐんと下げることができるでしょう。

脳神経外科

脳神経外科ではよく後頭神経痛、偏頭痛、筋緊張型頭痛などが扱われますが、耳鼻科と関連しためまいも含め、病院では治せません。

病院で治せないなら東洋医学で治すしかありません。

呼吸器科

呼吸器科では、咳喘息、喘息などが扱われますが、これらも病院だと気管支拡張剤やステロイドによる対症療法になってしまいます。

私の鍼灸院の患者様にも30年、40年と喘息で薬を服用している方がいらっしゃいます。この方は長年薬の服用をしているので、私が何を言っても「やめるのが怖い」とおっしゃいます。こんなにも長い期間薬の服用を続けることは、私からするとデメリットしかないと考えています。

泌尿器科

泌尿器科で代表的な症状は無菌性膀胱炎です。菌がないのに膀胱炎になったり、繰り返し膀胱炎を引き起こしてしまうといった場合、病院では根本改善することはできません。

しかし、東洋医学の鍼灸であれば根本原因から改善していくため、繰り返し症状が起こることはありません。繰り返す症状に患者様は精神的にもダメージを受けておられるため、皆さんが何とかしなければいけません。

症状は連動している

正直、整形外科領域だけを扱っているとその領域の症状すら治せない可能性があります。肩こり、偏頭痛、末端冷え性、生理痛といった複数の症状がある時点で肩こりは治せないと思います。

その理由は、これらの症状は全て連動しているからです。それどころか、患者様が困っているその他の症状は「治らない」とされている西洋医学の対症療法しか提案されないことが多く、根本から完治するのは難しいでしょう。

鍼灸は整形外科だけではない

皆さんが整形外科領域と合わせて他の科にも対応すると、肩こりだけではなく腰痛も同時に良くなります。

「肩こりだから肩に鍼をうつ」「腰痛だから腰に鍼をうつ」といった治療で本当に症状が良くなるでしょうか。眼精疲労の際に眼球に鍼は刺さないわけで、痛みがある部分だけを治療しても良くなるはずがないのです。他の領域への対応と整形外科的な治療、この2つをバランスよくおこなう必要があるでしょう。

一般的な鍼灸の認識は「整形外科領域」だと思われているため、やはり鍼灸院には整形外科治療を必要とする患者様が来られます。しかし、私の鍼灸院では内科的な領域についてもうたっているので、内科領域の患者様もいらっしゃいますが、やはり整形外科領域の患者様が多いのが事実です。

科を分けない治療

私は18万人いる鍼灸師の皆さんが、鍼灸師の潜在的な使命に気づいて欲しいと思っています。

冒頭にお話した「朝起きると腰痛、動悸、めまいがある」という場合こそ、鍼灸師の出番です。本来であれば病院が治さなければいけませんが、残念ながら全てを完治させることはできません。

「朝、不快な症状があっても活動をしていると治ってしまう」

こういったケースは根本的な原因を突き止めない限り、対症療法でしか対応できないのです。病院では腰が痛いから整形外科、めまいがするから耳鼻科と科を分けて診察をおこないます。

しかし、東洋医学は身体全体をみて治療していきます。森全体をみて木をなおすので、さまざまな朝の症状も治せるのです。しかし、皆さんの認識で「鍼灸師は整形外科領域だけしか対応できない」と思っているため、その整形外科領域さえも治せないプロがたくさんいると思います。

遊走性の疾患も東洋医学で

橈骨神経麻痺や正中神経の症状などは西洋医学の構造医学的アプローチでよくなる場合も多いです。

しかし、「朝、肩がしびれる」「今日はここが痛いけど、明日はここが痛くて、明後日はここが痛い」と遊走性になった時点で構造医学的アプローチが難しくなります。もはや筋肉や身体の構造とは関係ない部分で不調が起こっているため、身体全体を見る東洋医学が非常に効果的なのです。

さまざまな症状への対応

不調があって悩んでいる方の多くは、整形外科領域以外の色々な症状をお持ちです。

主訴は肩こりでも頭痛、潰瘍性大腸炎や逆流性食道炎もある、さらに眠りも浅く、生理痛や巻き爪もある。円形脱毛症も少しあり、風邪もひきやすく、風邪をひくと咳が止まらない。

こういった多くの症状に同時に悩まされている方はたくさんいらっしゃいます。それを肩こりだからといって肩井に鍼をうったところで本当に全ての症状が治るでしょうか。これは私からすれば、患者様も社会も良くならない「社会毒」です。

東洋医学の社会的価値

鍼灸師の皆さんが「本来の東洋医学をベースとした鍼灸治療が、いかに社会的価値が高いのか」に気づいてくれると嬉しいです。

私は東洋医学と西洋医学が同じ土俵に立つべきだと思っています。ただ、それを実現するには政治的なエネルギーが最も重要で、現実には難しいことだと思います。

私たちができることは18万人いる鍼灸師に本来の使命について気づき、本当の鍼灸師として目覚めてもらうことです。そして東洋医学の良さを理解して、一般の方に徐々に浸透させていくことだと思います。

鍼灸で東洋医学をおこなう鍼灸院が増えれば、患者様も体感を通じて認識が変わっていくでしょう。そして鍼灸師の皆さんには戦友となっていただき、患者様のため、自分のため、社会のために頑張って欲しいです。

東洋医学でしか治らない病気もある

何度も言いますが、「朝、腰が痛い、動悸やめまいがする」といった症状は整骨院でもカイロでも整体でも治りません。

朝の腰痛はしっかり寝た後に腰が痛いから起こることで、動くと楽になるのであればこれは構造医学的なものではありません。

その点東洋医学なら原因を追求し、根本から治すことができます。

東洋医学をおこなうのは鍼灸師である皆さんです。もちろん、医師が東洋医学に目覚めて漢方を用いた治療を行う、もしくは漢方の薬剤師に頑張ってもらえれば、それはそれで喜ばしい事です。

いずれにしても、東洋医学でなければ治らないものはたくさんあるという事実を知り、皆さんに鍼灸師の本当の使命について目覚めてほしいということをお話させていただきました。

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