「志鍼塾」は治療技術を学ぶ場であるため、習得状況にできるだけばらつきがないよう、事前に治療技術を学ぶのに必要な知識を身につけていただくことをお願いしております。ここでは入塾希望者の方に学んでおいていただきたい知識を4点紹介します。

その1 東洋医学概論「五臓の生理学」

脈診

専門学校等の教科書レベルで問題ありません。東洋医学概論の「五臓の生理学」と「気血水」については重点的に振り返ってください。

まず、「志鍼塾」の治療体系では、症状の原因を推測する際に「五臓の生理学」を重要視しています。肝の疏泄作用であれば、全身をくまなく血を行き渡らせる程度の理解で十分対応可能です。例えば、「精子に血が混じる」「血尿が出る」と訴える患者がいる場合、腎虚を疑う先生が多いのですが、実際は脾の統血作用が落ちているために出血していると判断します。

子供がチョコレートやお菓子をたくさん食べて鼻血を出した場合も脾の統血作用が低下した結果、引き起こされたと推測します。実際に色体表を確認すると、甘みと脾が密接な関係にあることがわかります。この脾の統血作用が甘みによって影響されたと読み解きます。

米を噛んだ時の甘さや、サツマイモの甘さなど自然界の甘みは脾を養いますが、白砂糖の甘みは脾の作用を低下させ、不正出血や鼻血、血尿、精子に血が混じるなどの症状として現れます。そのため、「血尿=腎虚」ではなく「脾虚」を疑う必要があります。

このように「志鍼塾」では症状の因果関係を考える際に「五臓の生理学」を使用します。

その2 東洋医学概論「気血水」

陰陽

「気血水」も「志鍼塾」の治療体系で重視される項目です。東洋医学では「気血水で体ができている」と考えるため、究極はすべての症状が気血水と関係し、気の病・血の病・水の病に分類します。

水の病を例にとると、女性に多いむくみは体内の水の流れが滞ることによって発生します。そのため、「水と関係している五臓である脾と腎に原因があるのではないか?」と疑います。また、血の病は肝、気の病は肺を疑います。

「志鍼塾」では、患者の症状を「気血水」によって分類し、関係性の深い臓器に原因があると推察します。次に「五臓の生理学」によって症状が現れる原因を突き止めてから治療をしていきます。そのため、「気血水」の振り返りも重要です。

心腎陰虚などの知識を使用するケースはほとんどないので、勉強会で取り上げる際に都度振り返っていただく程度で十分対応できます。

その3 諸原因にアプローチするための「経穴」

鍼灸施術

人体には経穴(けいけつ)が365程度、主要でないものを含めると400弱くらいあります。「志鍼塾」の治療で使用する経穴は40〜50程度です。すでに経穴を学んでいる学生や第一線で活躍されている先生が改めて振り返る必要はありません。

「志鍼塾」の治療体系では、五要穴と五兪穴、奇経八脈を頻繁に使用します。また、原穴や水穴も使用します。そのため、井(セイ)・滎(えい)・兪(ゆ)・経(けい)・合(ごう)、原(げん)、募(ぼ)郄(けき)、絡(らく)穴は確実に押さえてください。

また、奇経八脈も改めて確認しておくと治療体系の理解に役立ちます。その他、原募郄穴や絡穴も使います。40〜50個の経穴、事前勉強のテキストに出てくるツボを確認し、五要穴・五兪穴、奇経八脈の理解を深めてください。

その4 症状と実生活の関連を探る「色体表」

色体表

「志鍼塾」の治療体系では、色体表も重要な役割を果たします。東洋医学には、五根や五主といった五行分類がいくつもありますが、すべてを治療に使用するわけではありません。

前提として、中国で作ったものが日本に入っているため、日本人に当てはまらない部分があります。また、色体表が作成された時代とは生活様式が違い、現代ではほとんど当てはまらなくなったものもあります。「志鍼塾」では、現代の生活様式で頻出する色体表のみを使用しています。事前に学んでいただきたい色体表は下記の通りです。

頻出する色体表

「志鍼塾」の治療体系で頻出する色体表です。例えば、五臓が弱くなった時に発する臭いを分類した五香は、かなり弱くならないと臭いません。そのため、臭った場合はかなり弱っていると判断できます。喘息の人は色白の人が多く、これは五色に由来します。

五労の「歩く・見る・座る・寝る・立つ」はよく使用します。現代人はスマホの見過ぎによって夜に寝られなくなることがあります。「久しく寝れば肺を病む」ので肺虚の人は朝に症状が出やすく、「長く歩けば肝を病む」ので肝虚の人は長く歩いていると血の巡りが追いつかず症状が出てしまいます。

五菜で紐解いてみると、肺虚の人はネギやレンコンが好きな人が多い傾向にあります。これは体を養うものが美味しく感じるためです。また、三陰三陽治療で使用する五経は、六蔵六腑で理解していただきたい色体表です。五蔵も確実に必要になるため、しっかりとした理解をお願いします。

頻出する色体表一覧

五味(酸・苦・甘・辛・鹹)
五悪(風・熱・湿・燥・寒)
五志(怒・喜・思・憂・恐)
五液(涙・汗・涎・涕・唾)
五声(呼・言・歌・哭・呻)
五香(油・焦・香・生・腐)
五色(青・赤・黄・白・黒)
五菜(韮・薤・葵・葱・藿)
五労(久行・久視・久座・久臥・久立)
五経(足厥陰・手少陰・足太陰・手太陰・足少陰)

一部を使用する色体表

「志鍼塾」の治療体系で一部を使用する色体表です。現代人が悩む症状には一定の傾向や型があるため、色体表の使用頻度が高いものと低いものがあります。事前に頻出するもののみを学んでいただき、それ以外は都度勉強する形を推奨しています。

例えば、五穀に注目をすると、腎を高めるの豆の重要性を疑う余地はありませんが、稲が肺を強くする点について臨床で使用したことはありません。五果に属する果物は体を冷やしてしまうため避けるようにし、りんごやみかんなどで対応します。

五病では「肺→咳」のみ、よく使用します。気が滅入りやすい、恋煩いで食欲がなくなるなど肺虚でなおかつ憂鬱な人に当てはまりやすい傾向があります。

一部を使用する色体表

五穀(麦・黍・稗・稲・豆)のうち「豆」
五病(語・噫・呑・咳・欠嚏)のうち「語」

事前に勉強しなくてもよい色体表

こちらで紹介する色体表は、「志鍼塾」では滅多に使用しない、もしくは現代人の生活様式では該当するケースが少ないものです。そのため、入塾後に出てきた段階で勉強していただければ問題ありません。

例えば、五畜は肉を表し、牛が胃にいい、馬が肺にいいと考えますが、「志鍼塾」では肉は基本的に良くないものとして扱うため、事前に勉強する必要はありません。

五根(目・舌・唇・口・耳)
五主(筋・血脉・肌肉・皮膚・骨)
五役(色・臭・味・声・液)
五音(角・微・宮・商・羽)
五調子(雙調・黄鐘・一越・平調・盤渉)
五位(震・離・坤・兌・坎)
五畜(鶏・羊・牛・犬・豚)
五禁(酸・苦・甘・辛・鹹)
五宣(苦・甘・辛・塩・酸)
生数(三・二・五・四・一)
成数(八・七・十・九・六)

おわりに

これまでと違う治療体系を取り入れる場合、判断に迷うことが往々にしてあります。特に「志鍼塾」の治療体系で使用する経絡治療の初心者や初学者の先生の中には、戸惑う方もいらっしゃるでしょう。そのため、初心者や初学者の方も安心して学べるように一定の型を用意しております。

例えば、男性と女性の患者では治療の順序が違います。これは男性は陽、女性は陰という考え方に基づきます。また、東洋医学概論で六十八難、六十九難、七十五難型という治療法が存在しますが、七十五難型は使用しません。

他の勉強会のように網羅するのではなく、症状を治せる論理的な治療方法のみを採用しているため、再現性が高くコンパクトな体系となっております。まずは東洋医学概論の「五臓の生理学」と「気血水」、「経穴」、「色体表」を事前知識とする「志鍼塾」の治療体系の基本を身につけていただきたいと思います。慣れてきたら自身の改良を加えてみてください。

入塾後は基本を身につけた後、応用として変則的な治療を施した事例についても解説します。「誰がやっても同じ効果が得られる治療方法」を提供していきます。