鍼灸師が東洋医学の治療をしなくなった4つの理由とは?

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志鍼塾 塾長の石丸です。

今回は「鍼灸師が東洋医学をしなくなった4つの理由」についてお話します。

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東洋医学×鍼灸のパワー

個人的な見解になりますが、「鍼灸が最大限の力を発揮するのは、東洋医学をベースとして施術をおこなうから」と私は考えています。

私は柔道整復師の免許を持ち、整形外科、整骨院、カイロプラクティックなど幅広いジャンルで働いた経験があります。しかし、今までに経験したどのジャンルでも東洋医学ほど幅広く、かつ確実な効果を期待できる治療法はありませんでした。そんな東洋医学の歴史は非常に長く、遣隋使、遣唐使の少し前、582年、584年頃に初めて東洋医学が日本に伝えられました。

その後、西洋医学と同様に私たちの身近に感じられる治療法となり、鍼灸院やクリニックなど幅広い場所で東洋医学を用いた治療がおこなわれます。しかし現在、日本国内に存在する18万人ほどの鍼灸師の中で真の東洋医学を用いて施術をおこなっている人はたった5~10%と言われています。これは私からすると非常におかしな事実であると受け止めています。

鍼灸師たちは「鍼」と「もぐさ」を用いて施術をおこなってきたにも関わらず、道具はそのままにルールだけが変わったという状況が起こっています。野球で例えるとバッド、ボール、グローブを使って野球をおこなうものの、野球本来のルールを無視して試合をするようなものです。このような状況では当然、公平な試合ができません。

鍼灸師がなぜ東洋医学を用いて鍼灸施術を行わなくなったのか、4つの理由をお話したいと思います。私が知っている範囲の話であるため、間違っている点もあるかもしれませんが、ぜひご一読ください。

理由その1「明治維新」

1つ目の理由は、明治維新です。

明治維新の背景をおさらいすると、日本が外国から攻められる危機に直面したり、当時産業革命に成功したイギリスを中心としたヨーロッパに日本も追随しようという考えもあって、非常にシビアな状態でした。まさに、歴史上に強烈なインパクトを与える時代であったと言えます。

明治維新自体は日本の変革になくてはならないものでしたが、文化だけではなく医学も西洋を基にしたものへと発展してしまいました。

西洋医学のいいところはたくさんありますし、実際薬を飲んだり、レントゲンを撮ったりする治療は一般的に普及しています。しかし、同時に東洋医学も良いところがたくさんあるにもかかわらず、西洋医学だけをメインにしてしまうことはどうしても「変化しすぎ」と捉えられてしまいます。

相反する2つのものを、どちらか片方だけに偏らせると当然今までとはまったく違う暮らしを強いられ、弊害が出てくるでしょう。

残念ながらこの明治維新によって、漢方医は一度絶滅したようです。しかし、鍼灸に関しては盲人の存在もあり守られ、一度大きく衰退はしましたが、完全には途絶えなかったと言われています。

理由その2「GHQ」

2つ目の理由はGHQです。

GHQとは日本を占領する目的で設立された司令部のことであり、第二次世界大戦後、マッカーサーによっていろいろな日本の政策が変更されました。

この時に鍼灸にもテコ入れがあり、「針金のようなものを体に刺したり、火傷をさせるようなわけのわからないものはやめろ」と指摘されたそうです。しかし、この時にマッカーサーとの間で通訳をした医師が東洋医学を支持していたために、なんとか理由をつけて鍼灸の完全撲滅は避ける事ができました。

少し話はそれますが、敗戦により日本はご存じのとおりかなり欧米化しています。思想ひとつにしてもそうですし、現在使われている西暦も欧米化の影響ですね。

西暦はイエス・キリストが死んだ年なので、日本人にとってほとんど関わりがありません。しかしどのカレンダーや書類を見ても西暦は日常的に使われており、今や「あって当たり前」になっています。

このような経緯を踏まえると、東洋医学が衰退するひとつの原因と考えられるのではないでしょうか。

理由その3「学校のカリキュラム」

3つ目の理由は学校のカリキュラムです。

先に紹介した明治維新、GHQの経緯もあり、学校のカリキュラムも日常生活と同じように西洋化が進んでいます。

実は鍼灸師の国家試験の問題は13教科中10教科が西洋医学です。残りの教科は「東洋医学概論」「はり灸理論」「経穴」の3つで、東洋医学に関連する教科はかなり少ないと言えます。

鍼灸師を育てる学校の先生も「ずっと東洋医学に触れてきた」というわけではなく、西洋医学出身の先生がほとんどです。したがって、学校自体が西洋医学に重きを置いているところも少なくありません。このような状況であるために、学校に行っても西洋医学ばかり勉強させられるため、生徒も自然と西洋医学を支持するようになってしまいます。

私の場合は、鍼灸師を目指すきっかけとなった方が東洋医学を専門に扱っていたので、学校は「免許をとるためだけの場所」だと割り切っていました。だからこそ学校で変な影響を受けずに済みましたが、ほとんどの生徒は入学前から東洋医学だけを信じる強い心というのは持っていないのではないでしょうか。

理由その4「卒業後に働く場所」

最後の理由は卒業後に働く場所です。

卒業後に働く場所は病院、整骨院、鍼灸整骨院、マッサージ店、福祉関係など多岐に渡ります。

ただし、東洋医学を専門に扱っている就職先は皆無に近い現状があります。その理由は、東洋医学を専門に行っている治療院は社会的に認知度が低いからです。認知度が低いと新たに人を雇う余裕がないため、生徒のほとんどは卒業した後、西洋化した病院やクリニックで働く事になります。

西洋化した病院で患者様はもちろん自分も納得のいく治療をおこなうことができ、目に見える効果が出れば良いのですが、そう上手くはいかないケースも多く見られます。

私はいろいろな場所で働いてきましたが、効果も出ないままダラダラと曖昧な治療を続けている医院が多いと感じています。そういうやり方を実践していては、せいぜい患者様の2〜3割治せれば良い方でしょう。いい加減な治療や施術では肩こり、腰痛といった一般的な不調をも改善することができません。

逆に、真の東洋医学を用いて適切なアプローチをおこなえば、軽い肩こりや腰痛は1回で十分な効果を得られます。

以前、カイロの治療院での勤務や整骨院でのマッサージ、整形外科でリハビリもおこなっていましたが、どれも本物の東洋医学を用いずに曖昧な治療をおこなうばかりで、実際良くならないケースが多くありました。その後機会があり東洋医学の陰陽五行説を学んだ際に、「本物がここにある」と感じました。感銘を受けた私は勉強をし、東洋医学を用いた治療にも触れましたが、比べものにならいほどの違いと効果を感じました。

先ほど「肩こりさえも治せない病院が多い」とお話しましたが、そういった患者様の多くが他にも不調(愁訴)をお持ちです。整骨院やカイロでは手技療法をおこないますし、鍼灸院でも直接患部に鍼を刺すような物理的な施術をおこなうところが多いです。しかし、このような構造医学的な観点だけに重きを置いた施術は大抵よくならないばかりか、症状が悪化することすらあるのです。

東洋医学では目に見える症状、一番辛い症状の他にも不調があると考えています。肩こりの場合には以下のような症状があわせて出てくることが多いです。

  • 鼻が悪い
  • 風邪をひきやすい
  • 生理痛
  • 末端冷え性
  • 巻き爪
  • 動悸
  • 潰瘍性大腸炎
  • 呑気症
  • 耳管開放症
  • 円形脱毛症
  • 喘息

残念ながら多くの病院や鍼灸院では肩こり以外の症状を無視して治療をおこないます。もしくは無視はしなくても、「治療できない」と言い切られる場合も多いと思いでしょう。

複数の症状がある場合でもメインの症状(主訴)が肩こりであれば、その他の症状は放っておくことになりますので、スッキリと良くなることはありません。

例えば、生理周期によって頭痛が起こるケースがあります。婦人科と脳神経外科の領域はつながっており、生理前のイライラも婦人科と心療内科がつながっていることによって引き起こされます。

しかしながら、一般的には生理痛を和らげる薬を処方されて終わりというようなケースも多く、根本的な女性の悩みに寄り添う事ができていないことになるのです。

患者様に出ている症状はすべて「体からのSOS」と考えるのが東洋医学です。ひとつの症状だけではなく、すべての症状に真正面から向き合い、根本原因を探ることで完治を目指します。健やかな毎日を送りたいという方には断然東洋医学がおすすめです。

東洋医学をベースにした鍼灸施術が必要不可欠

世間的には西洋医学や構造医学と比べると東洋医学は認知度が低いうえ、施術をおこなう側もそのように認識しています。しかし今回の内容を踏まえると、18万人いる私たち鍼灸師は東洋医学をベースとした治療を行うべきだとわかるのではないでしょうか。

東洋医学をベースとした治療で足りない部分を西洋医学でカバーできれば、治療をする側もされる側も100%に近い満足度を感じられるでしょう。満足度の高い治療を行うと治療院も、もちろん流行ります。

回数券の販売、物販、営業トークといったごまかし行為は、日本国内で1500年以上という長い歴史を持つ東洋医学に失礼と言っても過言ではありません。鍼灸施術をおこなう際には、一人一人の体、症状としっかりと向き合う東洋医学の観点を大切にするべきです。

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