志鍼塾、塾長の石丸です。施術をする中でよく、「鍼とお灸の使い方にはどのような違いがあるのか」という質問をいただきます。
そこで本日は、それぞれの施術方法や効果の違いについてお話しします。
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鍼とお灸の施術は流派によっても異なる
鍼とお灸の施術にどのような違いがあるかの前に、それぞれの流派による違うがあるということをご理解いただくことが大切です。
私はよく、鍼灸院をラーメン屋にたとえます。ラーメンには、みそや塩、とんこつ、醤油といった種類があり、チェーン店でない限り、店ごとに味や具が違います。鍼灸院もラーメン屋と同じで、それぞれの施術には特徴があるのです。
東洋医学の考えが施術の根底にある
当院の施術は、「陰陽虚実を弁え、補瀉(ほしゃ)」という東洋医学の考えを原則にしています。
陰と陽は、女性と男性のように対比される存在で、陰体は冷えて細く、弱々しい状態の身体のこと。一方の陽体は、熱を帯びてパワフルな状態の身体を指します。虚実は、弱い強いといった状態を指す言葉で、強く悪いものは実邪、弱く悪いものは虚邪と呼びます。施術に際しては、患者の身体が陰と陽、虚と実のどの状態にあるのかを把握し、補瀉していきます。
補瀉というのは、補が補う、瀉が抜くという意味で、施術する場合は生気を補い、邪気を払うことを指します。たとえば足がつったり、四十肩・五十肩といった症状があるのは、身体の機能が弱まり、血の巡りが落ちている状態です。この場合は、五臓六腑の働きを上げる補法で症状の改善をはかります。反対に、外から入ってきた悪いものが原因で身体の調子がおかしいといった場合に、悪いものを外に抜くのが瀉法です。東洋医学は、補うか抜くかしかありません。そのために用いられるのが、鍼とお灸です。
補瀉をイメージするのにわかりやすいのは、テトリスというゲームかもしれません。テトリスは、落ちてくるブロックの凸と凹をうまく合わせて、消していくパズルゲームです。
どこが余計で、どこが不足しているのかを見極めることが重要ですが、鍼灸の施術でも同じような見極めが必要になります。ここには悪いものが入り込んでいて余計になっている、こちらは加齢や疲労のせいで不足してしまっているといったことを理解し、補法や瀉法を使ってバランスをとりながら平らにしていく作業が鍼灸の施術なのです。
東洋はり灸整骨院の鍼とお灸の使い分け
私が院長を務める東洋はり灸整骨院では、補法においても瀉法においても大きな効果を挙げるものとして鍼を用いています。
鍼はとても器用で、さまざまな症状に縦横無尽に働きかけます。その一方でお灸は、瀉法よりも補法を得意としています。また、風邪ならここ、慢性胃炎ならここといった具合に、置く場所がだいたい決まっているのも特徴といってよいでしょう。
鍼は、対症療法にも根本改善にも使うことができます。そのため、当店の施術の8割で鍼を使用しています。もちろん、これも流派によって異なります。鍼だけを用いるというところもあれば、お灸だけというところもあるでしょう。
ただし、マッサージでもみほぐせない筋肉の奥に鍼で刺激を与えたり、お灸で温めるという施術は、さほどレベルが高いとはいえません。私に言わせれば、ラーメン屋といいながらインスタントラーメンを出すようなレベルです。
東洋医学は、さまざまな症状を改善することができる、すばらしい理論です。使い方は流派によって異なるものの、理論に基づいて使用されれば、大きな効果を発揮します。鍼灸による施術では、それぞれの特徴をよく理解したうえで、より効果を発揮できる使い方を心がけてください。
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鍼灸師の地位向上と東洋医学の普及を目指し、仲間と共に成長していきましょう。