鍼灸師の免許があっても柔道整復師の免許もとったほうがいいのか?

鍼灸学生

足のカウンセリング

志鍼塾、塾長の石丸です。

本日は若い方から頂戴した「柔道征服しの免許は必要なのか」という質問にお答えしようと思います。

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柔道整復師の免許ももつ私自身の経験談

私自身は、鍼灸一筋で治せるようになっていきたいと考えていますが、実際には柔道整復師の免許ももっています。質問者も、周囲の先輩や先生方から「鍼灸師と柔道整復師の免許を両方持っていたほうが幅広く治療ができる」と言われて迷っているとのこと。

私が最初にとったのは鍼灸の免許でしたが、働く場所がなかったため、完全歩合制のマッサージ店で働くことから始めました。そのマッサージ店は今でいうサロンのようなところ。何をやっても大丈夫だったのですが、鍼灸の施術を依頼されることは年間で2度ほどしかありませんでした。

チェーン展開をしていたマッサージ店で、グループ全体で7店舗ほど。完全歩合制で、私の1ヵ月目のお給料は8万円でした。2ヵ月目になっても12万円だったので、もうやめようかとも思いました。

しかし3ヵ月目から何かしらの症状がある人全員に「鍼灸の施術で効果がなかったら代金を全額私の給料からお返しする」と伝えたところ、その月のお給料は22万円に。その後、徐々にお給料が上がり続けて、最終的には60万円にまでなり、全店舗の中でトップになったのです。

柔道整復師の免許をとったきっかけ

そのマッサージ店で私が右も左もわからない駆け出しだったころ、まったく違いやり方で施術を行っている先生に出会いました。

その先生は鍼灸と柔道整復師の免許をもっていたものの、少し変わった方で、宇宙エネルギーを利用した施術を行っていたのです。般若心経を唱えつつ石や棒を使って施術するというもので、何をやっているかはよくわからないものの、その先生の強い信念はよくよく伝わってきました。

その先生から、「柔道整復師の免許をとると間口が広がるよ」とすすめられたため、私は柔道整復師の免許をとるため、鍼灸学校の門を再びくぐったのです。

せっかくの免許をいかす場がない

しかし実際に、柔道整復師の免許をとっても、治療の幅は全く広がりませんでした。

柔道整復師の授業で学べるのは、包帯の巻き方や三角巾の使い方、テーピングの方法だけ。対象になるのは捻挫や打撲、脱臼、骨折、挫傷といったけがです。

実際に脱臼した方で練習もしますが、たとえ今の店に脱臼の症状を訴える方がこられたら、他の店を紹介するでしょう。学校以外で施術したことがない症状を、安易に引き受けることはできません。

鍼灸を究めようという店には鍼を求める患者だけ

「間口が広がる」からと完全歩合制のマッサージ店を辞め、自分の店を持ったものの、開業当初はとても暇でした。店の患者さまは1日に1人ほど。マンションの窓を開けると、近くの整骨院には1日に80人ほどの患者さまがある様子が見てとれました。

「鍼灸整骨院」と名乗ったのは、鍼灸整骨院だと思ってきてくださった患者さまに鍼の施術をすすめるため。しかし実際のところ、鍼灸整骨院を名乗っているものの、鍼以外の患者さまが来られたためしはありません。

当店のホームページにも、整骨院の要素があまりにもないため、鍼の施術以外を求められることがないのです。これは、たとえ鍼灸院を掲げていたとしても、同じ数の患者さまがおいでになったということ。

結果から言うと、柔道整復師の免許をもっていても困りはしませんが、鍼灸一つでやっていこうと思っているならわざわざ免許をとる必要はありません。

周囲の先輩や先生方が「あったほうがいい」とすすめてくれるのは、世の中の98%の鍼灸院がマッサージや整体などをメインにしているから。鍼を引き出しのひとつとしてしか考えていないのなら、柔道整復師の免許もあったほうがいいということです。

しかし、かりに鍼灸一本でやっていこうという覚悟があるなら、マッサージや他の施術に関する知識は不要。鍼灸整骨院という看板を掲げなくても患者さまの数に増減がないのですから、免許をとらなくてもよいでしょう。

鍼灸師が柔道整復師の免許をとるメリット

ただし、交通事故や労災を扱う場合は、話が別です。保険会社は、柔道整復師の免許を持っているだけでOKと判断する可能性があります。

しかしかりに事故にあった方の主治医が「鍼灸の治療が必要」だとする同意書があれば、鍼灸も適応されるようになります。工夫次第で柔道整復師の免許は必要ないというのが実際のところではないでしょうか。

鍼灸に携わる人にとって、鍼灸の免許をとるメリットが10だとしたら、柔道整復師の免許をとるメリットは1に過ぎません。そのひとつが、労災や交通事故の場合です。また、資格を2つ持っていることで、少々箔がつくといった効果がある程度。それにもかかわらず、免許をとる費用は同じだけかかります。

よほど金銭的余裕と時間があって、免許をもっておきたいと思うのであれば、持っていてもよいでしょう。その反対に、箔をつけなくてもいいから鍼灸の道を究めようと思うのであれば、それでもいいと思うのです。

鍼灸院に来られる方とマッサージ店に来られる方

マッサージをメインで行う鍼灸整骨院などでは、患者の窓口負担は高くても1,000円少しの価格設定になっています。しかし、鍼灸院では4,000円から6,000円ほどと、価格帯が全く異なります。

鍼灸院に来られるのは金銭的な余裕がある方と、深刻な症状に悩まされている方。症状を何とか改善してもらいたいといろいろなところを回ってきたにもかかわらず、そこで助けてもらえなかった方です。

何とかしてほしいという切実な思いがあるからこそ、ある程度の費用も覚悟しておられる。ちょっとした癒しではなく、症状の改善を求める患者さまの層は、マッサージメインの鍼灸整骨院とは全然違います。柔道整復師の免許ももっていたほうがよいという世界とは、全く異なるのです。

鍼灸だけを究めていこうという人が柔道整復師の免許をとるかどうかで悩んでいるなら、私は不要だと答えます。ただし、柔道整復師の免許をとるメリットもゼロではありません。そのあたりをどうとらえるかが、分かれ目だといってよいでしょう。

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