志鍼塾 塾長の石丸です。今回は「切診のコツ」についてお話したいと思います。
四診法の望・聞・問・切の最後である切診についてですが、私は脈診や腹診について非常に詳しいわけではありません。しかし、実際に当院で行っている治療や志鍼塾が行う治療の内容の中での切診のコツをお伝えしたいと思います。
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脈診
切診は触覚を用いた診察であり、その代表が脈診と腹診です。そのほかに背中をみるものもあるようですが、大きく分けるとこの2つでよいと思います。
まず脈診についてですが、脈診は脈状診と脈差診の2つに分けられます。われわれが行っているのは脈状診であり、この脈状診ではまず橈骨動脈の拍動部で六祖脈をみます。脈が浮いているか沈んでいるか、早いか遅いか、虚しているか実しているかの6つをみるわけです。
脈状診を踏まえたうえで、次は比較脈診です。この比較脈診は左右の寸関尺から「沈めて六蔵、浮かせて六腑」で六蔵六腑を比較し、どこがより虚しているのかをみるものです。
正直なところ、脈状診の中の六祖脈はそれほど難しくありません。おそらく10人の鍼灸師が六祖脈をみても10人が同じ診断になります。しかし、比較脈診になると10人がほぼすべてバラバラの診断になると思います。
私が勉強会に参加した際、偉い先生が集まった場でもかなり診断はバラバラでした。なぜこうなってしまうかというと、比較脈診は主観性が高く客観性が低いからです。それほど難しいものでもあるといえます。
次に、脈差診には三部九候診と寸口脈診があるそうですが、私は脈差診については知識がないので解説はできませんが、この2つがあることをおさえておいてください。
腹診
次に腹診についてご説明します。腹診は脈診と比較するとかなりわかりやすいと思います。腹診も難しいですが、脈診と比べると10人の鍼灸師が同じ診断になりやすいのではないでしょうか。
腹診もさまざまな流派があり一概にはいえませんが、われわれが行っている治療スタンスでお話します。まず、腹診では乳児のお腹が理想的とされています。乳児のお腹はプックリとしてツヤ、弾力があります。よくいわれるのは蒸したての饅頭のような押した時に固いもの(積)がない、冷えていないお腹がよいお腹です。
ここは重要な点ですが、この腹診によって患者様の予後がみられます。脈診でも予後はみられますが腹診の方がよりみやすいと思います。お腹が極端に力がない場合は「少し治りが悪いかもしれない」などの指標にもなります。
また腹診では五臓の配当をみます。脈診の比較脈診と同様にどの六蔵六腑が弱っているのかを肝、心、脾、肺、腎のみどころからみていきます。
主観的要素が多いと一致しない
脈診、腹診についてご説明しましたが、結局のところ問診が1番わかりやすいと思います。四診法の望・聞・問・切の中で客観的要素が高いのは問診だけです。たとえば、患者様が「頭が痛い」というのを10人の鍼灸師が聞いた場合、10人全員が「この人は頭が痛いんだな」と客観的に共有できます。
しかし、切診は六祖脈であれば合わせることも可能かもしれませんが、それでも間違えることがあります。聞診でも望診でもパッとみた印象は人それぞれ異なります。聞診の臭いや声のトーンなどはすべて主観的要素です。
このように望、聞、切は客観的要素よりも主観的要素の方が多く、10人中10人が同じ診断ができないわけです。
客観的要素で精度が高まる
これに対して問診は客観的です。「頭が痛い」といわれれば「頭が痛いんだ」と10人が思います。しかも患者様の言葉なので、患者様も合わせて11人が共有できるわけです。
このことから志鍼塾では問診を最重要視し、なぜ病気になっているのかを生理学、二十四節季、色体表などを駆使して分析し、おおよそ「こうなはずだ」にもっていきます。問診による「こうなはずだ」が「もしかしたらこれかも?」「いや、これかも?」となった時には腹診や脈診で確かめるわけです。そのほかに望、聞で要素を得ることもありますが、私はこの方法によって精度を高まり、1人の名人芸ではなくなると思います。
東洋医学最大の弱点とその解消法
やはり西洋医学がこれだけ伸びた理由は客観的要素にあります。たとえば血圧が160であれば患者様がみても160であり、ヘモグロビンA1cが7.0であれば看護師がみても医師がみても患者様がみても7.0です。これが客観的要素であり東洋医学の最大の弱点はここにあると思っています。
このことから、私は「客観的要素に基づいて証を立てられればみんなができるようになる」と考えました。そこからいろいろな工夫をし、もっとも客観的である問診から証を立てられるようになりました。これに加えて望、聞、切で補い、実際の治療では本治法、標治法と行い、お灸をするという型を決めました。この型で治療をすると、患者様の症状はどんどんとよくなっていきました。
さらにこの型は私が当院の従業員に教えても、その従業員がほかの人に教えても患者様の症状をよくしていきました。そこでこの方法を推し進めたのが私の鍼灸院であり、現在進行形で動いている当院は今後も拡大できるものと思っています。
最強の内容
「切診のコツ」としてお話していますが、脈診こそが東洋医学の芸術だと考え、深い世界で究極を極めようとすることは本当に素晴らしいと思います。しかし、それは私にはできない世界観であり、そのような方は一般的には少ないでしょう。
脈診が難しすぎるために経絡治療や東洋医学会の鍼灸治療を毛嫌いしてしまう方も多いのが現状です。私はこういった方に志鍼塾の内容は最強だと思っています。これは営業ではなく心から最強だと思っており、志鍼塾の誰にでも画一的にできるこの内容には非常に自信があります。実際に患者様を治すことで繁栄している当院がその証拠です。
脈診にこだわりすぎると危険
私の見解としては、切診のコツは脈診だけにこだわりすぎると危険だと考えます。脈診を極めたいと思う方はぜひ貫いてください。しかし、残念ながら私はそのような感性を持っていません。私は社会性を重視し、「どうすればみんなができるようになるか」を考えています。
1人でできることと100人、1000人でできることはまったく違うので、私はきちんと治せる二流の鍼灸師の大量生産を目指しています。そして、皆さんには日本全国でたくさんの患者様を治し、暴れ倒してほしいと考えています。
切診はほどほどに
この考えからも切診はほどほどがよいと思います。もしくは、たとえば「肺虚かな?腎虚かな?」と迷った時に「小腹不仁が明らかだ」「だから腎虚だ」と使う程度がよいでしょう。また脈についていうと、六淫(風・暑・火・湿・燥・寒)が入っているのか入っていないのかは基本的には脈でみるのが正解です。
もちろん、問診の中で理屈でもみられますが、より正確にみるには脈診です。これは脈診の中でもそこまで難しくはなく、3か月~1年ほどしっかりと勉強すれば誰にでもできると思います。ですので、私はこの程度がよいと考えています。
患者様に嘘をつかない
問診を中心にした治療で患者様を治せるようになった後に脈診でもみられるようになる旅に出ればよいと私は考えています。そのようなステップを踏まずに脈診だけを行うと初心者、中級者まではあやふやになってしまいます。私にいわせると、あやふやで患者様の治療をしてしまっているわけです。
あやふやではない客観的要素で理論的に絶対にこうだと確信をもって治療すれば、患者様は治ります。初心者、中級者の時にたくさんの患者様を治し、それを武器に「難しいけれど少し脈診の世界にも入っていこうかな」とすすめていく方が私は正しいと思っています。なぜなら、これならば患者様に嘘をついていないからです。
初心者ほど問診にウェイトを置く
切診のコツは「ほどほどに」です。とくに初心者、中級者までは問診に7割、望、聞、切がそれぞれ1割ほどのウェイトを置くとよいでしょう。中級者からは問診が5割、そのほかを5割ほどにしてもよいかと思います。
上級者ではそのほかの割合を上げていき、最強になると不問診というものもあります。患者様に「どうしましたか?」と聞かずに治療ができるようになれば、それは達人ですが、これは超上級者になります。初心者ほど問診に力を入れ、上級者になるにつれて割合をかえていくとよいと思います。
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鍼灸師の地位向上と東洋医学の普及を目指し、仲間と共に成長していきましょう。