【日本鍼灸の歴史】なぜ鍼灸師が東洋医学を実践しなくなったか?

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志鍼塾 塾長の石丸です。

今回は「なぜ鍼灸師が東洋医学を実践しなくなったか?」についてお話しします。

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東洋医学でしか扱えない疾患

鍼灸師の免許を取得し、東洋医学を実践している人は実は非常に少ないです。しかし、結果的には東洋医学を実践していないと扱えない疾患が多すぎます。東洋医学でなければ内臓疾患には何もできません。たとえば、下記の症状などは東洋医学でなければ治せません。

逆流性食道炎・梅核気・慢性上咽頭炎
胃酸過多症・胃もたれ・潰瘍性大腸炎
機能性ディスペプシア・耳管開放症
群発性頭痛・小児喘息・更年期障害
円形脱毛症・夜間頻尿・偏頭痛

これらは一例ですが、これだけ多くの症状が東洋医学でなければ治せないため、鍼灸師にとって東洋医学を実践しないデメリットは非常に大きいといえます。

さらにこのデメリットは鍼灸師だけではなく、実は社会にとっても大きなデメリットです。例にあげたような疾患は病院やその他の治療院では治せないため、本来であれば鍼灸師が治さなければいけません。

しかし、鍼灸師が東洋医学を実践しなくなってしまいました。この理由をお話したいと思います。

日本における東洋医学の歴史

まず、日本における東洋医学の歴史についてお話します。

東洋医学は600年頃に中国から日本に伝わりました。厳密には582年、聖徳太子の時代だそうですが、主に遣唐使、遣隋使によって交流が盛んになったことで伝わったようです。

その後、一気に時代は進みますが、東洋医学は江戸時代末期にもっとも栄えました。この江戸時代末期とは、日本がもっとも日本らしい時代でもありました。明治維新によって西洋文化がどんどんと取り入れられたため、この時代の日本人がもっとも日本の伝統的な文化の中で生活をしていたといえます。

明治になると西洋医学を取り入れたことで日本人の生活はかなり変わりました。明治初期を象徴する「散切り頭を叩いてみれば文明開化の音がする」という言葉がありますが、明治になるとちょんまげを結っている人はいなくなりました。

このように日本にとっては江戸時代末期がもっとも東洋らしい国であり、東洋医学が成長した時代でした。

東洋医学にとって大きな変化が起こったのは明治7年(1874年)でした。この時に西洋医学を学んだ医師の指示がなければ、東洋医学を行えなくなりました。つまり、1873年までは日本の医学は東洋医学が主流でした。

しかし、明治維新の一環として文化だけではなく医学も西洋化され、西洋医学を学んだ人しか医師として認められなくなりました。さらに鍼灸・漢方を行う場合には西洋医学を学んだ医師の指示が必要になったことで東洋医学は一気に衰退しました。

東洋医学の現状

そして現在は鍼灸師になるために学ばなければいけない13教科中、10教科が西洋医学、3教科が東洋医学となっています。実は鍼灸の学校に行っても東洋医学はほぼ学べません。さらに鍼灸の学校の先生も東洋医学をあまりよくわかっておらず、実技の時間も非常に少ないです。

国家試験もマークシートのみで実技の試験はありません。鍼灸師の免許を取得し就職したとしても、就職先ではおかしなマッサージやカイロプラクティックを行っているだけで鍼灸を実践している治療院はほぼありません。

さらに、西洋医学と比べると東洋医学の勉強会は少なく、鍼灸師会なども自律神経を扱う加入者ばかりです。

世の中の症状の多くは東洋医学

このように現状は学校、就職先、勉強会、テレビ、ネットなど、どこを見渡しても西洋医学ばかりですが、これは仕方のないことかもしれません。しかし、冒頭にもお話した通り、東洋医学でなければ治せない症状はたくさんあります。

私は世の中には東洋医学でなければ治せない症状の方が多いと思っています。西洋医学は対処療法ばかりであり、西洋医学に頼る必要はありません。普段の不調には圧倒的に東洋医学が適しています。

先ほど上げた症状の他にも下記の症状を治そうと思うのなら、東洋医学です。

  • 台風接近時に起こる頭痛・めまい
  • 風邪等のウイルス感染症…ウイルス感染症の薬は西洋医学にはありません。
  • 足がつる
  • 画像診断上、何も異常のない腰痛
  • 一生、服薬を続けなければいけない高血圧
  • 糖尿病

税収における医療費の割合

患者様を治そう、病人を減らそうと思えば、西洋医学の対処療法ではなく東洋医学です。しかし、それをしないためにこの70年間で医療費は210倍になっているわけです。

皆さんの税金が使われているので、これはもう他人ごとではありません。先日、現内閣が過去最高の70兆円の税収を得たと報道されましたが、このうち44兆2000億円が医療費です。この疲弊した日本で70兆円もの税金を集めておいて、そのほとんどの44兆2000億円が医療費に使われているわけです。ここを変えられると、日本は非常に楽になるでしょう。

おわりに

今回は「なぜ鍼灸師が東洋医学を実践しなくなったのか?」についてお話ししました。

鍼灸師が東洋医学を実践しないことには本当にデメリットが大きいです。社会、皆さん、患者様のすべての面においてデメリットです。

実際は気づかない人も多いと思いますが、これに気づくと治療できる幅が圧倒的に増えます。そして鍼灸師としては、東洋医学を実践した方がおもしろいと思います。症状を治し、患者様に喜んでいただき、社会にもよい影響を与えられます。

以上の理由から、鍼灸師は東洋医学を実践した方がよいと強く感じます。最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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