志鍼塾、塾長の石丸昌志です。本日は、私の生活の大部分を占める東洋医学や鍼灸の現状、今後予定している取り組みなどについてお話しします。
鍼灸との出会い
私と鍼灸との出会いは、私が学生のころです。大学を3年間休学し、ワーキングホリデーを利用してアメリカやカナダ、オーストラリアを転々としていたとき、そこで知り合った方のお父さまが鍼灸を生業としておられ、それが鍼灸との出会いにつながりました。帰国したあとすぐに私は画用紙に『東京』と書き、今も親しくしている先輩から20万円借り受けて、大阪の茨木インターからヒッチハイクで東京を目指しました。今から20年近く前のことです。
鍼灸業界の問題点
しかしそうして上京したものの、すぐに鍼灸の学校に通ったわけではありません。英会話スクールなどで働きつつ、勉強会に参加し、今の施術法と出会いました。そうした勉強会で印象深かったのは、多くの鍼灸師がマンションの一室などで細々と施術しており、施術法のすばらしさを伝えることが苦手だということ。懸命に勉強して、経験を積み、高レベルな技術を身につけていても、それにふさわしい生活を送っている人が少ないということです。そのためかさほど裕福な生活をしている人も少ないように感じました。
そうした姿を目の当たりにして私は、それではいけないと感じました。表舞台に立って、先頭を切っていかなければ、さまざまな症状に苦しむ人の目に留まることもないからです。
最近になってある先生から、私のYouTube動画を見て共感したというお電話をいただきました。とてもありがたいお言葉ではあったのですが、その先生の状況をうかがうと、1人で鍼灸院を運営しておられるとのこと。病院であれば、医師に加えて看護師や受付といった複数のスタッフを雇用できるのに、鍼灸院は鍼灸師1人で細々と運営するしかない――私は、こうした状況をとてもはがゆく思っています。症状を改善させる能力は鍼灸の方が上だと思っているからこそ、なおさらです。
どうすれば鍼灸のイメージが変わるか
鍼灸師を取り巻く現状を変えようと思うらならまず、鍼灸師自身が変わる必要があるでしょう。私が鍼灸学校に通っていた当時、先生から「クラスメイト50人の中で卒業後に鍼灸の施術で生計を立てられるのは1人に過ぎない」といわれました。鍼灸師の免許を取っても、うまくやっていけるのはたった2%だということです。
実際に、鍼灸学校の同窓会に参加したときにわかったのですが、卒業後に鍼灸で生活していたのは同窓会に参加した20人の中で私を含めた2人だけでした。残りの18人は、福祉関係やマッサージの方面に進んだり、鍼灸の施術から離れていたのです。すべての学校でそうだとはいいませんが、かなり低い確率であるのは確かなようです。
一方の西洋医学では、医師免許を取ったあと医師にならない人はいません。薬剤師免許を持っているにもかかわらず、薬剤師や薬の研究といった薬に携わる仕事に就かない人も少ないでしょう。看護師も理学療法士もケアマネジャーもヘルパーも、免許を取ればそれを仕事にする人が大部分を占めるのに、鍼灸師だけが鍼灸師の仕事をしないのはおかしいと思いませんか。皆さんにはぜひこのおかしさに気づいていただき、意識を高めて、東洋医学のよさを社会に広めていただきたいのです。
東洋医学は最後の砦
病院では、以下に挙げるような慢性病を治すことができません。
頭痛
アレルギー性鼻炎
喘息
不眠症
逆流性食道炎
腰痛
巻き爪
円形脱毛症
アトピー
高血圧
この他にも、子どもの喘息や中耳炎、夜泣き、逆子なども根本的に解決できません。
鍼灸院は、最後の砦です。多くの人がまず病院を受診し、次に整骨院に足を運びます。カイロや漢方などを試してもよくならず、最後に鍼灸を試そうという人が多数です。鍼灸院においでになるお客さまの多くが、慢性症状の中でも特に深刻な症状にお悩みの方が多いのはこうした理由です。
最後の砦である鍼灸院においでになるお客さまは、鍼灸の施術への恐怖心を何とか乗り越え、治してくれるなら何でもいいという気持ちで頼ってこられる方ばかりです。こうした心持でおいでになる方をしっかり治してさしあげることが、鍼灸院の運営を成り立たせるためには重要なのです。
しかし実際に治せる力を持った鍼灸院は全体のたった2%だけ。残り98%は、鍼灸以外にも手を出してどうにか経営しているのが現状です。こうした姿勢が、鍼灸治療への信頼感を損なわせてきました。
東洋医学はなぜ治せるのか
東洋医学は何千年もの歴史を有しています。これは、ありとあらゆる治療を施し、その効果を確かめ、実績を積み重ねてきた歴史でもあります。理論が後づけになったとしても、そこには、症状を改善できるという実績があるのです。
一方の西洋医学では、理論が先行しています。さまざまな薬害事件が起こるたびに慌ててその薬剤を禁止した事実が物語るように、科学的な「正しさ」は常に変化する可能性があります。まだ、実証実験を積み重ねている段階だともいえるでしょう。
ここに、東洋医学の強みがあります。先人が積み重ねてきた歴史を施術に活かすことで、迷いどころが少ないというのが大きなメリットなのです。
未来を予見することは、誰にもできません。西洋医学は、予見できない未来を予見しようとしている医学です。それに比べて、過去の歴史を現在に活かそうとする東洋医学は、できもしない予見を必要としません。安心して用いることができるのは東洋医学だと私が考える理由です。
こうした東洋医学の力を知っている私にとっては、鍼灸師の資格を取った人がその施術を極めようとしないことが不思議でなりません。
私の現在
ヒッチハイクで上京し、東京に友人もいなかった私は、ハングリー精神の塊でした。頼るものがない分、目標に向かってまっしぐらにひた走る他がなかった。その結果、町田店は日本でもっとも大きな鍼灸院のひとつになっています。
この現状をかつての私は信じられないでしょう。高校や大学時代の友人もきっと驚くはずです。彼らにとって私は、もっと意志の弱い人間に見えていたでしょう。しかし、海外に単独で赴き、ヒッチハイクで縁のない土地に出た経験が、私を変えました。東洋医学を実践し、鍼灸のすばらしさを世間に広めたいという強い想いがその当時から今に至るまで変わらず燃えています。
全国から来店される現状
私の院には現在、北海道や佐賀など全国的な規模でお客さまをお迎えしています。さまざまなご事情で来店が難しいという方からも、よい鍼灸院を教えてほしいという声があり、鍼灸施術に真摯に取り組む鍼灸院を数多く紹介してまいりました。こうした活動に加えて、動画やコラムを通して認知度を高め、東洋医学のすばらしさをお伝えできるのは幸せなことです。
現在鍼灸師として勤めている方にとってもこれから鍼灸師を目指す方にとっても大切なのは、東洋医学のすばらしさを理解すること。そのうえで、各自の力をあわせて社会を変えていければと願っています。
志鍼塾について詳しく知りたい方は次のページをご覧ください。
何をどのように学べるのか、価格や入塾方法についても記載しています。
鍼灸師の地位向上と東洋医学の普及を目指し、仲間と共に成長していきましょう。