鍼灸院の本質

鍼灸院

鍼灸師は結果が全て

患者様は体に違和感を感じたり、症状が出た場合、まずは病院へ行きます。例えば、腰が痛かったら整形外科、鼻水が止まらなければ耳鼻科か内科、目が腫れていたら眼科に行くでしょう。

しかし、慢性的な症状や根本的な原因を取り除かないと治らないような症状は改善しないので、そうした患者様は別の病院を探して病名を求めます。それでも病名がつかない症状も多く、整骨院やカイロプラティックにかかったり、整体、漢方を試したりした後、最後に鍼灸院に訪れるケースが多いのです。

鍼灸院が最後になる理由は、鍼灸治療で治るイメージが湧かないためです。整骨院やカイロプラティック、整体、漢方、これらはいずれもわかりやすい施術や処方を受けることができます。しかし、鍼灸は針を体に刺したりお灸をしたりする光景が頭に浮かんでしまうので、一般の人は「行けば治るかもしれない」とイメージしにくいのです。

「鍼灸って高そう」
「針を刺したり、お灸をするだけで治るの?」
「感染症は大丈夫?」

患者様は治らないかもしれないと思いつつ、もしかしたらと考えて鍼灸院を訪れます。考えられる限りの治療を受けても治らなかった人が、最後の望みを託すのが鍼灸です。そのため、鍼灸師は患者様の話に耳を傾けて、適切な治療を施し、症状が改善したと実感してもらう必要があります。

どこに行っても改善しなかった患者様に対して結果を出せれば、鍼灸の素晴らしさを知った患者様は、病院で治らないと感じる症状がでると一番に鍼灸院を訪れるようになります。「風邪引きました、鍼治療してください」と言われれば、一人前の鍼灸師と言えるでしょう。

鍼灸の地位が低い理由

手技

国が医療に大金をかけているので、西洋医学は国際的に認められるエビデンスを作りやすい環境にあります。そのエビデンスを利用して確立された術式や、厳格な臨床試験をクリアした薬を利用するので、練習や勉強によって一定レベルの治療が可能です。

ですので鍼灸師個人が経験を積み、技術を磨き、自分なりの治る鍼灸を作り上げるしかありません。しかも治療の効果を比べる対象がない場合が多く、治療の効果が上がらない理由が、鍼灸師の技術力の問題なのか、患者の体質の問題なのかも把握できない状況です。鍼灸師は自分から学びに行かない限り、自分の過去と比べることしかできません。こうした状況下で、鍼灸治療を正しく評価することは困難を極めます。

西洋医学と東洋医学の関係

西洋医学は、救急救命や外科、細菌感染症、1型糖尿病、透析が必要な方など、主に生命に関わる疾患得意としますが、あらゆる慢性病に対して非力であり全て対症療法です。

高血圧薬は血圧が高くなった方に処方されますが、高血圧の根本的な原因が取り除かれたわけではありません。風邪で熱が出た際の解熱剤も熱を下げますが、風邪自体を治すのは患者様の免疫力に任せています。このように患者様が医師にかかっても症状が良くならないのは、症状を治療しようとするためです。

東洋医学は根本的な原因を治療しようとします。冷え性を訴える方には血流を良くして体温を上昇させる治療を行いますし、風邪をひきやすいのであれば風邪を引かない体質を造る治療を行います。このように東洋医学はプライマリ・ケアを得意としていて、症状の根本原因にアプローチをします。

根本的な解決を目指すのであれば、東洋医学の治療を受け、命に関わる場合は西洋医学に任せるという良好な関係性の医療体制が最適解だと考えられます。こうした関係性を築くためには、10万人の鍼灸師が、患者様の治療を的確に行い、鍼灸が世間的に西洋医学に匹敵する治療方法であると知ってもらう必要があります。

鍼灸の役割

本来の鍼灸院は町医者のような存在にならなければなりません。医師は慢性病の患者に対して、病院は対症療法である薬(石油由来)を投与し続けているだけです。鍼灸師が総合診療医のような存在になり、西洋医学が必要な外科や救急救命や検査が必要な状態かを判断し治療する必要があります。

言い換えれば、症状が出た患者様の最初の選択肢がかかりつけの鍼灸院であるべきです。根本原因を探りつつ、命に関わる可能性が将来的に見込まれるのであれば病院へ行くことを患者様に勧められる鍼灸院こそ、本来の鍼灸のあり方でしょう。

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